大手合(01/05/24)
蘇耀国六段(黒) 対 宋光復八段(白) 黒75手まで、黒中押し勝ち

(株)チャイニーズドラゴン新報社のご好意により、同社の「チャイニーズドラゴン」週刊紙上の蘇耀国七段の「私の一手」より転載。囲碁界の若きホープ蘇耀国七段の対戦相手とのエピソードを織り込んだ棋譜をお楽しみください。

今回紹介する一局は僕の昇段譜です。昇段試合の通称は大手合といいます。大手合は一年間に8局あります。たとえ一年間全勝しても、昇段することはできません。昇段するためには、何年間の積み重ねが必要です。だから、実力を持っていても、いきなり九段になることは不可能です。今局は僕は黒番です。大手合は平常の新聞手合と違って、黒を持っても白にコミを出す必要はありません。黒が断然有利です。棋士同士、普段は友達でもありますが、対局をするときは敵同士になります。対局終了後、本来は食事を一緒にする二人ですが、勝者は敗者に気を配って、ほとんど一緒に食事することはありません。僕は明るいタイプなので、そういう雰囲気が好きになれません。勝負と友情は別じゃないですか?

囲碁棋士という職業は、ほとんどの仕事は座ってやるので運動不足になることが多いです。この前、友人にフットサルをやろうと誘われました。サッカーは子供の頃にやっていましたが日本に来てからは機会がありませんでした。今回、8年ぶりにサッカーボールに触れることになった僕はわくわくしながら試合場に向かいました。僕は棋士の中でも体力がある方と言われていますが、自分でも結構自信はありました。試合開始後、僕は攻撃に守備に調子に乗って動きました。でも、それを、2、3回繰り返したら、急に息がつまり走ることができなくなってしまいました。結局、僕のお陰でチームは大敗でした! 今回の試合で、自分の体力を改めて知りました。囲碁を勝つ為にも、体力は不可欠です。もっと運動して、健康な体を保つように頑張ります。

今回は、僕の友人の紹介をさせてください。先ずは、皆さんもよくご存知の張君です。僕とは8年程のつきあいになるでしょうか。親友でもあり、ライバルでもあるといった関係です。彼と僕では全く人間のタイプが違います。彼は、物事を論理的に考えることが好きで、いつも冷静にいることができます。僕も決して考えない訳ではありませんが、それよりまず、行動が先だと思っているところがあり、結果的に、正反対だと見られることが多いんです。だからこそ、互いに得るものがあり、飽きることなく友達でいられるんでしょうね。彼はまた、クールな反面すごく細かく気をつかってくれる人でもあります。感情を表に強く出すというのでないので傍からは分かりにくいのですが、彼の心配りのお陰で、僕は随分楽をさせてもらっていると思います。現在、彼は本因坊戦の挑戦者です。友人として誇りに思うと同時に、僕も頑張るぞ!という元気も湧いてきます。何だか誉めてばかりいるようですが、本当のことだから仕方ない。僕にとってはそれだけ大切な友人ということです。

小さい頃、家族でよく旅行に行きました。そういう時、父親は必ず、湖や川を見つけて、僕を連れて釣りに行きました。父親がいうには、釣りは、魚を釣るだけでなく、周りの景色を眺めて、時を楽しむのも大切。この父親の影響もあり、僕は釣りをすることが好きになりました。今も、暇が出来れば釣りに行ったりします。魚を釣り上げることよりも、魚を待って時の方が好きです。湖を眺め、周りのものを観察して、小鳥の鳴き声を聞いて、ゆったり時間が流れて----、ぽっとしているだけで、日頃の疲れが癒せる気がします。

先日、僕はNECの対局で、広島に行ってきました。NEC杯はいろんな新聞棋戦と違って、囲碁ファンの前で試合する棋戦で、全国をまわって対局します。同行したメンバーには、柳時薫天元、溝上知親七段、山田拓自六段がいました。広島といえば、やっぱり原爆ドーム見学でしょう。僕は原爆ドームをはじめ、資料館や平和公園を見学しました。とっても勉強になり複雑な感じでした。夜は、皆と一緒に広島の街を観光しました。広島は東京に負けないくらい、とっても、賑やかでした。びっくりです! 次の日は対局日です。皆は観光気分から気持ちを切り替えて、対局に臨みました。対局終了後は、夜の便で東京に帰りました。毎年のように、全国いろいろなところに行く機会を作ってもらえて、本当に嬉しいです。地方に行くたびに、いろんな名所を観光して、僕にとっては、非常に勉強になります。

今回は仲良しの友達の山田規三生八段を紹介します。規三生先生は、友達と言ったら、失礼なくらいの方です。皆さんもご存知でしょうか? 彼は3年前に王座を獲得、昨年は世界戦で、決勝まで進み、劉昌嚇と世界一を争いました。惜しくも3対1で負けましたが。実績を見るだけで、本当に雲の上にいるような存在です。そんな彼、外見はクールで、なかなか近づきがたいのですが、実際に話をしてみると、面白くてとっても優しい先生です。僕も一緒にいる時は、気楽で楽しいです。規三生先生とは、もう7年の付き合いになります。彼の一言で、非常に印象に残っているものが在ります。まだ16歳のとき、大阪で手合いを打つ前日に、僕は規三生先生の家に行きました。囲碁の勉強をしながら、いろいろ自分の悩みを彼に話しました。「最近何をしてもやる気がなく、碁も勝ったり負けたり。どうしたらいいのかな?」。彼は僕の話を聞いて、こういいました、「蘇君が一番楽しいと思う時はどういう時?」。僕は答えました、「碁に勝っている時が一番楽しいです」。「だったら、楽しくなるために、地味に碁の勉強をするべきでしょう」。確かに誰が聞いても簡単な理屈かもしれないですが、僕は感動しました。自分が楽しくなれるように自分が努力するよりない、と思いました。

 
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