十段戦2次予選(02/02/14)
蘇耀国七段(黒) 対 張栩七段(白) 黒235手まで、黒中押し勝ち

(株)チャイニーズドラゴン新報社のご好意により、同社の「チャイニーズドラゴン」週刊紙上の蘇耀国七段の「私の一手」より転載。囲碁界の若きホープ蘇耀国七段の対戦相手とのエピソードを織り込んだ棋譜をお楽しみください。

今回は一番最近の公式戦を紹介したいと思います。張栩君と公式戦で 打つのは1年ぶりくらいでしょうか。彼とは同じ94年に入段し、二段、三段----七段まで一緒に上がりました。張栩君とは 普段からの仲良しでもあります。でも、自分でも気が付かないうちに、少しずつ実力が離れて、気がついた時には、雲の 上にいるような存在でした。だけど、少し考えてみたら理由ははっきりしています。碁に対する執着心や普段の生活態度が 違うのです。比べたら失礼といわれるくらいでしょう。張栩君とは普段から一緒に勉強しているので、お互い相手の棋風は 良く分かっています。棋風はその人の性格を表すといいますが、張栩君の読みとヨセの正確さは天下一品だと有名です。 だから性格もしっかり者ということで、納得できます。でもそうなると、僕の棋風は序盤から最後まで、めちゃくちゃ だから、即ち、僕はめちゃくちゃな性格をしているということになるのでしょうか、ちょっとショックです。

僕の後援会である「蘇耀国会」は8年前に出来ました。後援会の皆さんには日頃からとてもお世話になっています。 蘇耀国会では毎月1回は必ず例会が開かれ、交流しています。大勢の集まりだから、いろいろなタイプの碁を打つ人がいます。力碁、実利重視、 勇み足の人・・・その中でも一番面白いのは、やっぱりこの方、宇宙流のKさんです。Kさんと初めてお会いしたのは7年前です。「なんという形の良さ、 全局感も良い」僕はびっくりしました。確かに細かいところでは少し甘くなることもありますが、でも中央には必ず大きな地が出来る。二子の相手としては、 不足なしです。それから7年、Kさんは着実に少しずつ碁が強くなっているはずなのですが、今では手合い割が四子になっています。皆さんは不思議に 思われるかもしれませんが、僕はKさんとの碁の勝ち方を覚えたのです。地は負けていてもいいから、とにかく宇宙流を破って中央に地を作らせない、 形もKさんの注文を外してみると、なんとKさんは碁が勝っていてもよく投了してくるのです。面白いですね。それがなければ、二子でも僕はなかなか 勝てないのに・・・。
先日張栩くんと2人で食事に行きました。その時「集中すると思わず出るプロの癖」について話をしました。拓ちゃん (山田拓次六段)は首をくねくねさせるし、武宮陽光四段は、悪手を打った後にギャグを飛ばすから、周りの観戦者が思わず笑ってしまうんだよね。 豊猷くん(張豊猷五段)は秒読みに入ると、持っている扇子を振り回すかのように自分に叩きつけるので、周りの人は自分に当たらないかとハラハラ しているよね。そして緑星学園出身者は、対局開始から最後までずっと正座している習慣があるよね。「耀国は、碁の形勢が悪くなるとその通りにぼやく よね、形勢の良い時は首を左右に振る、皆、その癖に気づいているからやめた方がいいよ」と。 栩くんはというと、いつも爪を噛む癖があります。その日はいつにも増してぼろぼろだったので質問すると、「最近の相手は手強い人が多くて・・・。 これじゃ指が持たないよ・・・」誰か、彼に指を貸してあげられませんかね?

先日、小松先生に「うちの研究会でマラソン大会に出場するのだけど、メンバーが1人抜けたから代わりに出ないか」と誘われました。最近は 運動不足気味なので、ちょうどいいと思い出場することにしました。当日、僕はいつもより早起きし、冬なのに短パンをはき、気合い満々の格好で 会場に行きました。当日知ったのですが、僕が代わりになったメンバーの出場条件は、「30歳以上のハーフ3キロコース」。僕の実年齢と同じ20代の 選手は10キロコースを走ることになっています。研究会の先生たちには、「こんな顔で30歳以上という奴はいないぞ、よく受け付けてもらえたな」 といわれました。レースが始まり、僕は自信満々でスタートしました。普段運動していないとはいえ先生たちは全員30過ぎだし、どう走っても3位 以内にはは入れるだろう・・・。しかし、2キロ過ぎても、先生たちのスピードは依然落ちません。僕はもう限界なのに・・・。結局、順位はチーム内 で5位。完走するのが精一杯だった僕は自分の体力のなさに驚きました。もし22歳の僕が本当の年齢資格で出場したら10キロ走るところなのに、3キロで クタクタになっているのは情けないです。体力ずくりはしっかりやらねば、と思いました。

研究会のある金曜日、僕が必ず立ち寄る店があります。それはニラたまのおいしい定食屋さんです。夜遅くまで研究するため、各自夕食を済ませてから、 研究会に参加するのですが、僕はその店のニラたまを必ず食べて、研究会に参加するといっても過言ではありません。時間にゆとりのある日には、 自宅で料理するようにといつも心掛けています。得意な料理は魚です。好きな魚の切り身を買い、皿に盛り、好きな味付けをした後に、みじん切りにした 生姜とネギをたっぷり乗せ、湯の入った鍋に入れ、15分ほど蒸すのです。これがあれば、他におかずが無くてもよいくらい、お気に入りです。

最近の僕は、いつにも増して碁の勉強をしています。どんなに勉強しても、自分の力の弱さを自覚すると「まだまだだなぁ」と落ち込みます。 昔の僕は自信に満ちていたように思います。特にこれといった理由もなく、そうでした。でも、人間は大きくなると考えることが増えますね。 昔の僕は碁に対して、何の思い入れも無く、伸び伸びと打っていて、負けても何のプレッシャーも感じず、次の対局に臨んでいました。しかし、 今のぼくの碁は、はっきりとした結果が欲しくて、なにか堅くなっているような気がします。堅実になったお陰か、勝率は以前より上がりましたが、 しかし、それ以外のものも何か確実になくしているような気がします。それは何なのか、はっきりとはわかりませんが・・・。

この碁に勝てて、僕はとても嬉しかったです。でも 張栩君は調子が悪く、不本意な出来だったでしょう。本因坊リーグやNHK杯など色んな手合いが重なって、疲れが取れていなかったようです。 これからはもっと碁を勉強して、張栩君と同じ大舞台で活躍できるよう、頑張ります!

 

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